教科書出版の桐原書店、中堅印刷会社 図書印刷に株式51%譲渡しグループ会社へ
教科書出版の桐原書店、中堅印刷会社 図書印刷に株式51%譲渡しグループ会社へ
2017.10.30
創業50周年の教科書出版会社 桐原書店(東京都新宿区)が凸版印刷グループの中堅印刷会社 図書印刷に株式を51%譲渡すると発表した。株式譲渡は11月15日に行われる見込み。
桐原書店は高等学校用の英語・国語科目の検定教科書及び学習参考書の出版に強みを持つ。一方図書印刷は創業100年を超える製版・印刷企業であり、1948年に設立した子会社の学校図書は小学校・中学校教科書の出版社である。今回の株式取得により、図書印刷グループは桐原書店が持つ、高校教育および英語教育のノウハウを得て、学校図書の事業との間で相乗効果を期待する。
教科書業界は、2020年から施行される新学習指導要領に対し、教科書・学習参考書の改訂や教育コンテンツの拡充が求められている。今回の指導要領改訂では、ICT教育およびグローバル人材を輩出する英語教育の進化の2つがキーワードとなっている。ICT教育では、教育現場でのICT活用が推進され、従来の紙の教科書以外にも電子媒体やアプリを活用した新たな教材制作が求められ、図書印刷にとってはデジタル事業拡大の原動力となることが予想される。また英語教育では、英語コミュニケーションスキルを多角的に問うものとして大学入試でのTOEIC、TOEFLの利活用が促進され、英語教育のパイオニア的な存在である桐原書店にとっては事業拡大のチャンスともなる。教材開発力を持つ桐原書店、学校図書と、教材印刷製本およびデジタル化を担う図書印刷。グループ全体でさらなる飛躍を目指す。
コメント
英語参考書「Forest」を代表格に、高校生・大学入試向けの教科書及び参考書を数多く出版してきた桐原書店は、近年、フィリピン・セブ島の語学学校を買収し、オンラインの英語教材を提供するベンチャー企業と業務資本提携するなど、時流を捉えた事業拡大に果敢に挑戦してきました。英語教育の低年齢化が進む中で、学校図書が持つ小中学生教育コンテンツ制作ノウハウは、桐原書店にとっての今後の金脈と見ることができます。一方親会社となる図書印刷は、主力の商業印刷がデジタル化の拡大に伴いビジネスモデルの変化を余儀なくされており、コンテンツ事業の拡充によって、同社事業2本目の軸足を強化したいところ。両社Win-Winを描いた今回の売却・買収ですが、今後は企業組織というハード面の統合に留まらず、お互い長年の歴史を持つ企業同士の様々な隔たりを超えた、人材やノウハウの交流などソフト面での統合に期待が集まります。