弁当ケータリング事業2/4:事例2:事業部売却!M&Aによる企業再生の道
●ノンコア事業部門の売却により本業回帰に成功した事例:弁当ケータリング事業のケース
〜本業に注力するため、ノンコア事業の弁当ケータリング事業を売却〜(第2回/全4回)
ノンコア事業の弁当ケータリング事業の売却を決断したA社長と、インターネットを利用した弁当デリバリー事業を行っているB社長とのトップ面談が実現しました。トップ同士はM&Aについて前向きでしたが・・・。
株式譲渡か事業譲渡か〜中小企業での最適なM&Aの方法とは〜
M&Aにおける問題点〜株式譲渡か事業譲渡か、譲渡スキームの選択
ところがトップ同士こそ意気投合したものの、実際にM&Aを進めるにあたり、様々な問題が噴出しました。特に最大の問題は、譲渡スキームの決定でした。事業譲渡か株式譲渡かで、長期間紛糾したのです。ここで、事業譲渡と株式譲渡の違いについて、簡単にお伝えします。
【株式譲渡】 売買対象は株主の保有株式。譲渡に際して通常は代表取締役が変更となるが、従業員側から見れば、労働条件や職場は同じまま。株主と代表者が変更になるイメージ。 |
【事業譲渡】 売買対象は事業そのもの。具体的には、譲渡対象事業の資産・設備・什器備品および営業権等が譲渡対象になる。つまり、譲渡対象事業の顧客、仕入先、従業員等も譲渡対象になり、譲渡対象に関連するすべての契約は再締結する必要がある。したがって、顧客や仕入先、従業員の流出のリスクが高くなるケースがある。また、従業員から見れば、労働契約も新しい買い手と再締結し買い手の就業規則に則ったものに変わる。 |
譲渡スキームを決めるミーティングは、A社メンバーと弊社のみで行われました。A社からは弁当ケータリング事業譲渡の担当者C氏、M&Aに詳しいというA社の顧問弁護士、その他専門家が同席。C氏はもともとA社の弁当ケータリング事業の従業員で、弁当事業については詳しい人物です。
C氏は会議の中で、「今回の譲渡での最重要課題は、譲渡金額というよりはむしろ、譲渡による従業員へのダメージがないようにしたい。」との話でした。この点は、この会議以前にも何度も話題で出ていたこともあったので、弊社は従業員とのトラブルが起きにくい株式譲渡、つまり一度弁当ケータリング事業をA社から切り離して分社化し、別法人にしてから、その新会社を買い手に譲渡するスキームを提案しました。元々A社は事業部制を敷いているので、グループ内の組織再編ということで事前に分社化しても、従業員からすれば違和感はありませんし、説明もしやすいのです。その後売却ということになっても、従業員からすれば自分の雇用形態や勤務先に変化もなく、表面的には代表者が変わるだけなので、売却にともなう従業員流出も事業譲渡と比べれば最小限になる可能性が高くなります。ところがA社の弁護士は、株式譲渡も事業譲渡も結局は同じことだ、分社化するのは手間暇がかかるし、事業譲渡で良いのだ、と言い張ります。
しかし、中小企業のM&Aの現場は、M&Aの教科書通りではないのです。事業譲渡であれば、例えば譲渡により経営主体が買い手に変わるので、規模が大きく立派なA社の就業規則から、B社という若い会社の就業規則に則った雇用形態に変わってしまいます。従業員にとって、自分の雇用環境が大幅に変わることは、流出リスクにつながりやすいのです。
(第2回終/全4回)
事業部売却!M&Aによる企業再生の道/事例2:弁当ケータリング事業のケース(第1回)
事業部売却!M&Aによる企業再生の道/事例2:弁当ケータリング事業のケース(第3回)
事業部売却!M&Aによる企業再生の道/事例2:弁当ケータリング事業のケース(第4回)