プリスクール2/4:事例3:英語幼児教室・プリスクールのケース/M&Aのアドバイザーが知る「現場におけるM&Aマナー」
引継ぎ後の両社
売り手D社・・・今まで大切に育ててきた英語幼児教室・プリスクールをしっかりとした会社に譲渡するという大きな目標は達成したが、引継ぎ終了後は買い手E社から協力を要請されても、契約内容に盛り込まれた内容以外は一切断るほど関係が悪化。
買い手E社・・・基本合意の段階で、買い手E社が新しい室長を探すまでの間、売り手D社長が引継ぎ期間終了後も引き続き室長として協力すると口頭で快諾していたものの、引継ぎ終了後はD社長の協力をまったく得られず、英語幼児教室・プリスクールの運営に支障をきたし、園児数が激減、業績が大幅に減少。
M&Aアドバイザーから見たM&A失敗の原因
このケースで、最終契約まで進んだもののM&A後に業績を落としM&Aが失敗したのには、大きく2つの原因がありました。
【失敗ポイント1】中小企業のM&Aに不慣れな経理担当者がDDを実施
基本合意後のDDの段階で、弊社から中小企業のM&Aに精通した公認会計士等にDDを依頼するよう何度も伝えたにもかかわらず、買い手E社の経理担当者によってDDが実施されました。
DDでは、簡単に帳簿のチェックをするだけだという話だったこと、帳簿内容がしっかりしていることに自信があったことから、D社長は税理士を呼ばず、自分だけで対応。ところが、E社の経理担当者が中小企業のM&Aの監査業務に詳しくないこともあり、帳簿を精査するというよりD社長へ直接インタビューする形に終始してしまい、既にF部長に回答している事柄も重ねて何度も聞く形となり、細かい経理処理に詳しくないD社長に次々と即答を求めるだけの、およそ監査業務とはかけ離れたDDになってしまいました。
弊社の懸念が的中し、D社長は激怒、一時はE社には譲渡したくないというところまで関係が悪化しました。
弊社では、DDを中小企業のM&Aに精通した方に依頼するよう譲受会社にお願いしております。実際、「経理がわかっている」ことと「監査業務ができる」ことは大きく違います。
このケースでは、買い手側がコストカットばかりを意識せず、しっかりとした専門家によって監査をすれば、M&Aの短期間で築き上げた売り手社長との信頼関係を壊すこともありませんでした。
中小企業はトップの力量が大きくかかわっているので、買収後も売り手社長の協力を得たいと考えることも十分あり得ますが、引継ぎ期間終了後協力を得られるかは、両社の人間関係に左右されます。
(第2回終/全4回)
M&Aのアドバイザーが知る「現場におけるM&Aマナー」/事例3:英語幼児教室・プリスクールのケース(第1回)
M&Aのアドバイザーが知る「現場におけるM&Aマナー」/事例3:英語幼児教室・プリスクールのケース(第3回)
M&Aのアドバイザーが知る「現場におけるM&Aマナー」/事例3:英語幼児教室・プリスクールのケース(第4回)