実例が物語る中小企業M&Aの教訓(第2回/全2回)
実例が物語る中小企業M&Aの教訓(第2回/全2回)
第2回:M&A成約、そして会社売却後の売り手社長
トップ面談後、買収希望会社B社から連絡があり、ぜひ前向きに進めたいが、工場の機能や生産能力が自社のニーズとマッチしているのか知りたいとのことでした。
工場見学の結果、想定よりも状態が良く、製造能力も高く、整理整頓がしっかりしていて、好印象で安心したとのことです。
同時に、弊社はA社の最大の問題点である財務数値を改善する為の改善プランをいくつか策定し、B社にご説明しました。黒字転換のプランと併せて、販売代理店として卸売業のみを取り扱っているのと違い、自社で某製品を製造した場合利益率が大幅にアップする事、販売エリアが近隣なので配送ルートを使えることなどを含め、B社の既存事業とシナジーがどれだけあるのか、丁寧にご説明しました。(買い手の注意点:具体的なビジョンを持て)
他にも、財務数値や工場等について様々な質問がB社からありましたが、A社長は誠実に丁寧に答え、必要な資料は即座に提出してくれました。(売り手の注意点:情報開示(資料提出、質問回答)、誠実かつ迅速な対応(質問に対して等))
A社長は親族からの借入金の関係で譲渡金額を下げることにはまったく応じず条件調整が難しい状況でしたが、最終的に親族に債権放棄してもらうことで両社合意に達し、M&Aが成立することが出来ました。(売り手の注意点:条件(譲渡金額、その他の諸条件)に柔軟に対応)
M&A成立後、月日が過ぎ、弊社に1通の嬉しい年賀状が舞い込んできました。それはA社長が可愛い赤ちゃんとともに笑顔で写っている写真入りで、「念願の子供を授かる事が出来ました。A社を経営している時は子供などとても考えられなかったけれど、今はとても幸せです。思い切ってM&Aに挑戦して本当に良かったです。」と書き添えられていました。
M&Aが、A社長の経営者人生を大きく変え、幸せをもたらしたのだと実感した瞬間でした。
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【売り手の注意点】
1 譲渡決断のタイミングは早めに
2 情報開示(資料提出、質問回答)
3 誠実かつ迅速な対応(質問に対して等)
4 条件(譲渡金額、その他の諸条件)に柔軟に対応
【買い手の注意点】
1 買い手は売り手の企業文化を尊重すべし
2 具体的なビジョンを持て
3 木を見ず森を見よ
交渉の過程で、あまり細部にこだわり過ぎると交渉が硬直化してしまうことが多いです。細部も時には重要ですが、総合的・大局的な見地に立つことも必要です。
4 決断のタイミングを大切にせよ
M&Aの交渉は時間をかけすぎたり、決断のタイミングを逃してしまうと、不成立になってしまう「生もの」的な要素が強いです。
(終:第2回/全2回)