M&Aのアドバイザーが知る「現場におけるM&Aマナー」/事例1:訪問介護のケース(第3回/全4回)
訪問介護のケースが、基本合意直前に急にM&Aの交渉が決裂してしまった原因は、大きく2つあると考えます。
【失敗ポイント1】売り手が、基本合意直前に突如譲渡条件を変更
何度もトップ面談で交渉を重ね、ようやく基本合意目前となった頃に、突然売り手C社長が基本合意日を半年ほど遅らせたいと言い出しました。
もともと、出来るだけ早く譲渡したいというC社長の希望に沿う形で話が進んでいたので、買い手D社長からすれば肩すかしのような状況で、「譲り受けたい」という気持ちが冷めてしまったようでした。
まして基本合意直前のタイミングだったので、M&Aの資金繰り、引継ぎやその後の管理体制等考えると、M&Aのスケジュール変更は買い手に少なからず負担がかかります。
M&Aでは短期間で両社の信頼関係を築くことが求められ、交渉途中における大幅な条件変更は破談になってしまうリスクが高くなります。このケースでは、譲渡時期を遅らせる可能性にについて最初から買い手に説明しておけば、信頼関係を壊すこともなく成約に至った可能性は十分にあります。
【失敗ポイント2】買い手が、M&Aから業務提携に話を変更
売り手C社長が半年譲渡時期をずらしたいと言った後、急に買い手D社長が、その半年間はまず業務提携を結び、両社で訪問介護事業を運営した後に、改めてM&Aを検討したいと言い出しました。
この場合、M&A前に業務提携をすることは、その後のM&Aの話そのものが無くなってしまうリスクが懸念されました。提携期間終了後に、予定通りM&Aの話が進み、成約するとは限りません。提携期間中、買い手が思う通りに物事が進まず、提携終了後譲受を断るリスクがあり、提携がノウハウや従業員流出につながりかねません。
結局、熟慮の末、売り手側が業務提携を断り、M&Aそのものも破談となりました。
(第3回終/全4回)
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